このタイトルと正面から向き合ったのは、実に10年ぶりである。当時はまだ漫画版も出ておらず、世間からの注目度は今よりも随分と薄かったのであろう。だが私はその頃にこの本を読むこととなる。課題図書として学校から出されたのが何を隠そうこれの感想文であったからだ。
残念ながら当時読んだ記憶は全くと言っていいほど今は残っていない。そんな「君たちはどう生きるか」と久しぶりの対面を果たすことになったきっかけは宮崎駿の同名映画なのである。
私は主流に乗るのが苦手な人間で、なかなか世間受けのいい映画、特にファミリー層向けの映画という印象を持つことの多い宮崎駿作品を見るという機会を積極的には作ってこなかったし、本作についても当初はあまり見るつもりがなかった。ただこれらが話題となった7月13日、タイトルが10年前に読んだ書籍のタイトルというただその一点だけが、私をこの作品の鑑賞を決意するきっかけとなったことは言うまでもないだろう。結果この作品を鑑賞後、久しぶりに原著を読みたい衝動に駆られ、三省堂に駆け込むこととなってしまった。
この記事はネタバレも織り込みつつ、この映画を鑑賞してどのような感想を抱いたかを綴った備忘録として、かなり硬い文体でまとめていきたいと思う。考えがまとまっていないし、原著をまだ読み直していないため不正確な部分があるとは思うが、これが「思考の欠片」であることに留意してこの先を読み進めてほしい。また、今回この映画のプロモーションがほとんど行われていないことからもわかるとおり、前提のない中で「君たちはどう考えるのか」を重点に置いた映画だと思うので、もし見る予定があるひとはなるべく早く、こんな感想を読まずにまずは映画館へ向かってみることをお勧めしたい。
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