アルバム「Sakanaction」ってすごい〜「夜の踊り子」再ブームをきっかけに考える〜

  • LINEで送る

最近「夜の踊り子」の再ブームが来ている。

由来はご存知の通りタイのボートの踊り子ネットミームが元々あったところに、韓国のユーザーがこの曲を当てたところから来ているようである。かなり昔の曲がこのタイミングでこの曲がまたフィーチャーされたことは一ファンとしては、シンプルな嬉しさとミーム由来という複雑さが汽水域のように混じり合っている。

この影響からオリコン週間ストリーミング急上昇ランキング TOP10(2026/5/11-17)にサカナクション楽曲が複数入っているようで、ランクインしたのは以下の楽曲。

  • 1位「夜の踊り子」
  • 5位「Aoi」
  • 6位「ミュージック」
  • 7位「アイデンティティ」
  • 9位「忘れられないの」
  • 10位「多分、風。」

ここでアルバム「Sakanaction」収録曲を見てみよう。

  • intro
  • INORI
  • ミュージック
  • 夜の踊り子
  • なんてったって春
  • アルデバラン
  • M
  • Aoi
  • ボイル
  • 映画
  • 僕と花
  • mellow
  • ストラクチャー
  • 朝の歌

なんと上記ランクイン曲のうち3曲がこのアルバムにも収録されているのである。

むむむ…改めて今回このアルバムの凄さを感じるものである。本稿ではこの「Sakanaction」に抱いている個人的な主観と裏付けをセットでうまいことまとめようと試みる。

改めてこの「Sakanaction」がどのようなアルバムだったのか、当時の情報をもとに簡単に振り返ってみよう。

まず前提として発売は2013年。今から13年前だ。サカナクションにとって6枚目のオリジナルアルバムであり、収録曲には、各種タイアップで作られた「僕と花」「夜の踊り子」「ミュージック」に加え、2013年NHKサッカーテーマとして発表された「Aoi」も含まれている。つまり、外部へ大きく開かれた楽曲が複数収録されたアルバムといえよう。実際商業的にも大成功を収め、このアルバムは発売初週に8.3万枚を売り上げ、オリコン週間アルバムランキングで1位を獲得した。バンドデビュー初の快挙である。またこの年紅白にも「ミュージック」で出ている。

この中でも私が強烈にハマったのが「ミュージック」だった。

実はリアルタイムでこの曲にハマったわけではない。ある時SNSでちょっとしたミームになっていた「新宝島」からサカナクションを知った。その流れで関連動画に出てきた「ミュージック」を何度か聴くうちに、気づけば歌詞まで追いかけるほど引き込まれていた。ハマったその日にApple Storeでこの曲を購入したのも、特定のアーティストにここまで引き込まれたのも、当時の自分にとっては初めての経験だった。その日は2017年6月25日。この日一人の魚民(サカナクションファンのこと)が生まれた。

…少々脱線したがこの曲の良さは「歌詞」と「曲」そのどちらの完成度も非常に高いのである。内容について熱弁するのは別の機会に譲るとして、この曲から自分は何度も励まされているし、何度も勇気をもらい続けている。ただ、この曲に励まされると言っても、よくあるような明るく背中を押される曲とは違う。自分にとって「ミュージック」は、孤独に飲み込まれそうになりながらも、小さな火を消さないように踏ん張り続ける曲に聴こえる。群れから離れた鳥の孤独や、だらしない生活の気配を抱えながら、それでもまだ見えない誰かに向けて歌い続ける。その姿に、何度も励まされてきたのかなと思っている。

そしてこの「外へ向かう意志」と「内側にある孤独」が同居している感覚は、アルバム「Sakanaction」全体にも通じている。ただし、それは大衆受けを狙っているという意味ではなく、外に向かった曲の中にも、どこか個人的な孤独や内省が沈んでいる、という感覚に近い。タイアップ曲は確かにこのアルバムは多いが「ベストセレクション」としてのアルバムにはなっていないはずだ。

その感覚を少しでも裏付けるために、「Sakanaction」の構成を自分なりに分解してみよう。

結論かなり比喩的に大雑把に言うとこのアルバムは水面へダイブするところから始まり、深海や表層を行ったり来たりしながら最終的には水面へ浮上していくような一枚と考えている。

まず「intro」は、その名の通り入口である。ここで深く広い海の水面に飛び込む。そこから「INORI」で一気にリズムが立ち上がり、ダンスミュージック的な音の中で身体が水中の動きに慣れていく。アルバムのクッションとしてここにインスト曲を入れるのは非常に面白い。

そして「ミュージック」で、外へ向かう意志と内側にある孤独両方を赤裸々に語る。

その後の「夜の踊り子」や「Aoi」など、比較的外へ開かれた曲になる。この後ろの「なんてったって春」ではこれまでとは一転、春の天気を題材にちょっと深いところに潜っていく。「M」ではアップテンポながらちょっと通な感じの曲になる。個人的にはこれを聴くと夕方の情景と儚さが鮮やかに立ち上がりかなり好きな一曲だ。後半の「mellow」になると、黄昏時の水面を漂っているようなマットな感触の曲調になり深海の深いところに潜っている感覚になる。

そして終盤の「ストラクチャー」がすごく良い。同じリズムの反復なのに、少しずつ音が厚くなり、だんだん賑やかになっていく。歌詞で説明される物語はないのに、音の重なりだけで確かに物語性がある。最後にクラップで終わる余韻も含めて、この曲はアルバム終盤の深いところを担っていると思う。飛行機の音も含めて南国っぽい心地よい曲だよな〜と思いながら聴いている。

最後に「朝の歌」で我々は水面へ戻ってくる。本アルバムの主題である「表裏一体」が主題になっているようで歌詞の中に繰り返し現れる。この曲で夜(≒深海)が終わり朝(≒浅瀬)を迎えて、サカナクションと聞き手が「さようなら」をする。そんな曲なんじゃないかと思う。彼らは深海で手を振っていそうだ。

…と「Sakanaction」の構成はこのようになっている。非常に完成度の高いアルバムなので、「夜の踊り子」に触れた人には、ぜひこの曲だけで終わらず、アルバム「Sakanaction」を是非聴いてみてほしい。

ひとりの魚民として皆様をお待ちしております。

p.s. そういえば「夜の踊り子」のマッシュアップめっちゃ良いんですよね。この人の「多分、強風」も良いので合わせてどうぞ。

  • LINEで送る

コメントを残す

*

日本語が含まれない投稿は無視されますのでご注意ください。(スパム対策)